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2024.11.27
【登壇レポ】静岡市主催セミナー│経営戦略としての働き方改革/男性育休推進
こんにちは。空き家買取専科 子育て広報の三輪です。
前回に続き、セミナーの登壇レポートをお届けします。
今回は、10月に静岡市主催で開催された「経営戦略としての働き方改革/男性育休推進」セミナーについてのレポをしていきます。こちらの講演会では、経営者や総務・人事担当者の方々を対象に登壇させていただきました。
経営戦略としての働き方改革/男性育休推進
このセミナーの講師は、株式会社ワーク・ライフバランスの大畑愼護さん。
その事例紹介として、空き家買取専科(株式会社Sweets Investment)取締役 黒田淳将とフジ物産株式会社 代表取締役社長の山﨑伊佐子さんが登壇しました。
株式会社ワーク・ライフバランスの大畑愼護氏による講演
講師の大畑さんの講演もとても興味深かったので一部をシェアさせていただきます。
働き方改革の背景と必要性
●日本の現状
日本はOECD加盟国の中で、労働時間が長いにもかかわらず、生産性が低いとされています。特に、長時間労働が依然として広く行われており、付加価値の低い労働に多くの時間を割いていることが問題であり、これが企業の競争力低下や従業員の疲弊につながっています。
●人口動態の変化
日本は「人口オーナス期」(生産年齢人口が減少し、扶養する高齢者の比率が増える時期)に入り、従来の長時間労働に依存する経営モデルが成り立たなくなっています。これに対処するためには、短時間で高い生産性を上げる働き方が求められます。
●経営戦略としての働き方改革
今後は「社員がよく眠る企業」が勝つ時代である。睡眠不足による集中力の低下やミスが増えることで、労働生産性がさらに低下するため、社員の健康と生産性を維持することが重要です。
男性育休推進の重要性
●育休の法改正
2022年と2023年に実施された法改正により、男性育休の取得促進が企業に義務付けられました。具体的には、企業が個別に男性社員に育休取得を打診し、そのための環境整備(研修やパタハラ防止など)を行う必要があります。また、1000人以上の従業員のいる企業では、男性社員の育休取得率を公開することも義務化されました。
●育休推進のメリット
男性の育休取得は、従業員エンゲージメントの向上や離職率の低下、採用応募数の増加といったポジティブな効果をもたらすことが証明されています。特に、育休を取得した男性は職場復帰後にリーダーシップやチームワーク力が向上する傾向が見られるそうです。
●夫婦関係と育休の関係
資料では、男性が育休を取得することで、産後の妻の負担が軽減され、夫婦間の愛情が維持されると強調されています。特に、0歳児の育児参画が重要で、この時期に夫が育児に積極的に参加することで、夫婦の関係が良好に保たれることが示されています。
心理的安全性の重要性
Google社の「プロジェクト・アリストテレス」による研究では、生産性の高いチームには心理的安全性が確保されているという共通点が明らかになっています。特に、均等な発言機会や社会的感受性が高いチームほど、生産性が向上することが報告されています。社員一人ひとりが安心して意見を述べられる環境を整えることが、チーム全体のパフォーマンスを引き上げる重要な要素です。
日本人の労働時間と生産性
日本の男性はイタリア人の2倍働いているにも関わらず、労働生産性はわずか72%と大きく差をつけられています。集中力の限界
人間の集中力が保てるのは起床後13時間まで。それを超えると、集中力は低下し、15時間以上になると酒酔い運転と同じレベルで仕事をしているのと変わらない状態になると言われています。睡眠不足のリスク
睡眠不足の上司は、モラルハラスメント(モラハラ)やパワーハラスメント(パワハラ)を行う可能性が高くなるそうです。産後うつと家族のサポート
産後うつは4人に1人が経験する可能性があり、家族のサポートが不可欠です。この点では、男性の育児参加が非常に重要です。男性の育児参加の効果
男性が育児に積極的に参加すると、第二子以降が生まれやすいという統計が示されています。
空き家買取専科の男性育休について
事例紹介やパネルディスカッションでは、黒田さんが自身の男性育児休業取得について語りました。
黒田さんが育休を初めて取得したのは、取締役の石川さんから「育休取っちゃいなよ!」と、軽いノリで勧められたことがきっかけでした。当時、奥さんの妊娠がわかったのは2016年で、男性の育休取得率はわずか3.16%。しかも、取得者の多くは5日以内の短期取得にとどまっていた時代でした。
黒田さんが育児休業の取得を考えたとき、スタッフがパートを含めて4人しかおらず、店長としてほぼすべての業務を担当していたため、「長期の育休なんて無理だろう」と思っていたそうです。
しかし、取締役の石川さんから「どうやって育休を取るか考えてね」と背中を押されたことがきっかけで、育休取得に向けて具体的に考え始めました。
その結果、黒田さんは業務の棚卸しを行い、自分の仕事を一つ一つ見直していきました。これにより、不要な業務を削減し、業務の改善(カイゼン)を進めることができました。また、他のスタッフでもできる仕事はしっかりと引き継ぎ、育休取得の準備を整えていったのです。このプロセスを通じて、黒田さんは「どうやって育休を取るか」を真剣に考え、実行に移すことができました。
また、事務所に出勤しなくても業務が円滑に回るように、テレワーク環境を整備しました。突発的な仕事にも対応できる体制を整え、顔を出す程度で、業務進行に大きな支障が出ることなく進められたそうです。
黒田さんが育休を取得したことで、会社全体の働き方改革が加速し、第一子、第二子の誕生時にはそれぞれ約2ヶ月、1歳時に1ヶ月の育休を取得しました。奥さんが仕事に復帰するタイミングや子供の保育園入園時にも育休を取り、奥さんの負担を軽減し、夫婦で子育てに向き合う時間をしっかり確保できたとのことです。
育休から復職後は、店長業務をパートスタッフに引き継ぎ、自身は執行役員としての業務に専念することができ、さらなる成長の機会を得たそうです。
また、空き家買取専科では、結婚や子育て世代のスタッフが多く、男性の育休取得が当たり前の文化として定着しています。これまで男性育休対象者全員が育休を取得できたのも、このカルチャーがあったからこそです。時には、少数精鋭の営業スタッフ2人が同時に育休を取得したこともありましたが、何とか乗り切ることができました(笑)
育休に入る約半年ほど前から、会社全体で準備を進めることで、育休に入る本人も安心してその期間を迎えることができ、夫婦で協力して子育てに取り組むことで家庭環境も良好に保たれると、黒田さんは強調しました。
育休をマイナスに捉える経営者が多い中、黒田さんは「育休は会社と個人、双方にとって成長のチャンスだ」と語りました。経営者がこの考え方を持ち、育休を積極的に活用することで、会社の仕組みも社員のスキルもより一層アップデートされるのです。
フジ物産株式会社の対話
一緒に登壇した、フジ物産株式会社 代表取締役社長の山﨑伊佐子さんは、先代から引き継いだ会社であり、テレワークに取り組めない部署から反対の意見もあったりと、改革には苦労したことも多々あるそうですが、業務に合わせた業務の効率化、副業の導入、若手に期間限定で執行役員になってもらい新しいプロジェクト立ちあげるなど様々な取り組みをおこなってきています。
中でも一番大切にしていることは、やはり対話だそうです。社長が一人一人と向き合ったり、チームでの少人数での対話が良い組織をつくるためにはとても有効とのことでした。
フジ物産とは
フジ物産は、1957年創業。静岡市清水区に本社を置き、冷凍水産食品の加工・販売から飲食事業、エネルギー事業まで幅広いビジネスを行う企業です。また、ビジネスだけでなく地元静岡のスポーツチームのサポートや地域活動にも力を入れながら、地域社会の活性化に貢献しており、さまざまな領域に企業活動を広げています。
セミナーを終えて
2つの講演を通じて感じたのは、働き方改革や男性の育児休業推進が、社員の幸せや成長、そして会社の生産性向上に繋がる「Win-Win」の関係を築く鍵であるということです。社員が家庭と仕事を両立できる環境が整うことで、モチベーションが向上し、結果的に仕事へのパフォーマンスも上がります。また、テレワークや復業、育休取得をはじめとした柔軟な働き方を推進することで、会社全体の仕組みや働き方が見直され、効率化が進むのです。社員と会社が共に成長し合う、そんな企業が増えていったら嬉しいです。