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2024.05.21
【レポート】空き家の会in京都~前編~
先日、Facebookコミュニティ「空き家の会」のオフ会で、京都での空き家活用事例を見学してきました。
現地でのリアルな情報交換や事例紹介を通じて、貴重な体験をしてきました。今回は、その内容を前編・中編・後編の3回にわたってお届けし、空き家活用への思いや具体的な事例を共有します。
空き家の会について
■空き家の会とは?
「空き家の会」は、空き家に関心のある人々が集まる非公開のFacebookコミュニティです。国内最大規模を誇り、空き家に関するさまざまな情報交換やセミナー、交流会が活発に行われています。このコミュニティを通じて、遠方に住むメンバー同士でも共通の目的を持つ者同士がつながり、そのエネルギーや結束力が地域の発展に寄与しています。
コミュニティメンバーは約50,000人に達しようとしており、グループ内では様々な空き家活用に関する情報が日々交換されています。また、不定期に開催されるZOOMでの全国メンバーとのコラボイベントや、月に1回の空き家法律セミナーなどがあり、メンバーは常に新しい知識を吸収することができます。
各地域でのオフ会も不定期に開催され、そこでの出会いが新たな繋がりやビジネスチャンスに発展しています。日本の社会問題である「空き家問題」の解決に向けて、コミュニティ全体で積極的な活動を続けています。
■Facebookグループ
『空き家の会』〜空き◯の再生・活用で共に学び合い成長できるコミュニティ〜
空き家の会オフ会に参加
今回のオフ会は京都で開催されました。京都といえば、美しい景観を守るための景観条例が厳しく定められていることで知られています。この条例のもとで、どのようなまちづくりやリノベーションが行われているのか、とても興味深く、ワクワクしながら参加しました。
■京都府亀岡市大井町並河を歩く
最初の訪問地は、京都府亀岡市大井町並河です。初めて降り立ったJR山陰本線の並河駅は、のどかな雰囲気が漂う素敵な場所でした。集合場所は駅から徒歩10分ほどのところにありましたが、特に目立つものはなく、一見すると何もないように見えました。
このエリアには、古い借地や古民家、新しい道路やピカピカの新築住宅、そして近くにはショッピングセンターもあり、同じ地域内での強烈なコントラストを感じました。
快速電車が1時間に1本しかないため、乗り遅れると大遅刻してしまうということで、かなり早めに到着しました。そのため、近くに見つけたお洒落な古民家カフェで一休みすることに。後でわかったのですが、このカフェもプロジェクトの一環だったのです。(プロジェクトの詳細は後ほどお伝えします)
▲no-mu cafe 築100年の古民家をリノベしたカフェ&ホテル
■空き家の会のメンバーと合流
集合時間になると、続々と空き家の会のメンバーが集まり始めました。以前のオフ会や藤枝市でのイベントでお会いしたことのある方々や、オンラインで何度か顔を合わせたことがある方々、さらには全く初めましての方々まで、東は千葉県から、西は宮崎県まで、全国各地から総勢25人以上が京都に集まりました。
今回のオフ会で数々の取り組みを紹介してくれたのは、京都で一番ファンキーな不動産屋さん、川端寛之さんです。川端さんについては次回の中編で詳しくご紹介しますので、お楽しみにしていてください。
■京都府亀岡市大井町並河について
このエリアは数年前に区画整理が行われ、写真にあるニコイチの賃貸住宅の前には、以前は細い路地や住宅が立ち並んでいた場所だったそうです。区画整理が進むと、街の印象や建物の使われ方も一変しますね。ただ通り過ぎるだけでは見落としてしまうような変化も、話を聞くことで新たな発見がありました。そこに生活していた人々の思い出の重みを感じる瞬間でもありました。
▲区画整理される前の様子
▲現在、区画整理がされた様子
■霧霧(キリム)プロジェクトについて
この地域は、亀岡盆地の北東部から北部にかけて愛宕山山系がそびえ立ち、冬になると霜が頻繁に発生します。そのため、亀岡のお店やイベントでは霧にちなんだ名前が多く使われています。集合前に私が訪れた古民家カフェ「no-mu cafe」もその一つです。実は、このカフェは「霧霧(キリム)」という物件を手掛けたオーオーさんの息子さんが霧にちなんで名付けたそうです。
遊牧民族たちが織るキリムをリビングに敷くのと同じように、この街に集った人たちが、自分たちの価値観で生きられる居場所を自分たちの手でつくれるようにという願いも込められています。
さらに、ここから生まれる暮らし方や集落のあり方が、SUSHIやSAUNAのように、特定の場所で使われていた言葉が世界中で一般的に使われるようになったように、ここから始まり、ここで育まれていく生き方や暮らし方が、未来の標準や基準になっていくことを願って名付けられました。
■霧霧(キリム)プロジェクトの特徴
このプロジェクトの特徴は、他のリノベーションプロジェクトとは異なり、物件のオーナーがリノベーションをしない点にあります。正確に言えば、「リノベーションしない、貸し方をリノベーションするプロジェクト」とも言えるのです。
具体的には、借主が物件を安く借り、自分たちで必要な部分だけをDIYでリフォームします。これにより、借主は余分な経費をかけることなく、自分たちのニーズに合った空間を作り上げることができます。
物件は、借主が自分たちでDIYでリフォームするには十分な状態であり、完全にボロボロというわけではないものの、そのままでは住むには少々厳しい築年数のものでした。しかし、借主の創意工夫によって、とても魅力的な内装に生まれ変わっており、その変化にはワクワクしました。
■霧霧(キリム)プロジェクトで使われているお店へ行ってみる
現在、このプロジェクトの物件はアトリエ、オフィス、ショップ、カフェ、住居など、さまざまな用途で借り手がついています。中には、静岡の醤油が置いているお店もありました。店主に話しかけてみると、店主も静岡出身とのことで、まさかこんな静岡とは縁がないような地で地元の話ができるとは思いませんでした。このようなストーリーがあると、親しみを感じられますね。
そのままでは、入居者が減って管理費もかさんでしまい、家や地域が徐々に傷んでいってしまう家が、貸し方をリノベーションすることで、家自体だけでなくこのエリア全体が活性化し、循環していくことができている地域でした。
集まる人々は、古き良きものを大切にしつつ、新しい生活スタイルを楽しんでいます。このプロジェクトは単に空間を再生するだけでなく、人々の心にも新たな火を灯していることを物語っています。改修された家を見るたびに思うことですが、本当に活かし方次第で、何度でも輝けることを感じました。
中編では、今回ご紹介した霧霧(キリム)プロジェクトから程近い、「A HAMRET(ハムレット)」プロジェクトについてご紹介します〜。